今回は提案のやり方についてお話をしていきます。
営業職とかの人からすると当たり前のことなんですが、そういった仕事をしていない人には馴染みのない話だと思います。
しかし、どんな仕事にも提案のやり方は役に立つんですね。
その理由と提案をする上で一番大切なことについてお話をしていきます。
目次
なぜ「提案のやり方」が必要なのか
仕事をする上で非常に重要である
まず最初に提案というのは、企画書を書いたり、プレゼンをしたりすることだけではないんですね。
本質的には、自分に決定権がないものを相手に選んでもらうというのが提案なんですね。
業務の改善案を出すのもの立派な提案なわけです。
それこそ会食のセッティングやセミナー会場の選定など、相手に選んでもらうという点で言うと全てが提案なんですね。
つまり仕事をしている人は、多かれ少なかれ普段から提案を行っているというわけです。
だからこそ提案のやり方を知っているということは、仕事をする上で役に立つということになります。
提案の正しいやり方
提案の方法を知らない方がやってしまうのが「これどうですか?」と1個のものを持ってきてしまうんですね。
一生懸命作ってくれたり、探してくれたりするのはいいことなんですけど、1個のものを出されると、それが良いか悪いかのジャッジしかできなくなってしまうんですよね。
だから提案をする際は、1つではなく複数の候補を出してみることが大切です。
例えば3個くらいの提案があれば、その中から一番良いものが選べますよね。
その3つの中に良いものが無かったとしても、方向性的にはこっちの方がいいという話ができるんですね。
ところが1個のものを持ってきて「これはどうでしょうか」となると、すり合わせができないんですね。
だから「提案するときは複数の提案をする」というのが前提条件なんですよ。
提案する候補が複数あるメリット
私はサラリーマンのときにホームページを作っていたんですけど、ホームページってデザインの段階から素人のお客さんが入るんですね。
そのときお客さんから「デザインを3パターン見せて」とか「提案をして」とか言われるんですよ。
こっちにしたら、デザインを3つ作るということは、結局3枚デザインするんだから、コストが掛かるわけじゃないですか。
時間も掛かるので、当時は「なんでそんな簡単に3つ提案してとか言うんだよ」って正直イラついてたんですね。
だけど、だんだん分かったのが、向こうも自分の頭の中を完璧に伝えられるわけじゃないし、こちらがいくらヒアリングしてもニュアンスの違いは存在するわけですよ。
つまり提案というのは、選んでもらうのがゴールじゃなくてスタートなんですね。
提案がスタートで、その後のすり合わせが大事だから、その為の方向性を探す為に1個じゃ駄目なんですね。
提案する相手にも優先順位がある
ここがまず前提としてある上、さらにこちらの提案として、提案意図が、1個だと伝え辛いんですよ。
例えば忘年会の会場を選ぶとき、3つお店を選ぶのであれば、1軒目は距離で選びました、2軒目はコストで選べました、3軒目は内容で選びました、みたいな感じで出せるじゃないですか。
提案をしているということは、自分には選択権がないということなんですね。
決裁権がない。それを受け取る側に決裁権があるということは、相手に選んでもらわないといけないんですね。
じゃあ自分の思っている優先順位と相手の優先順位って違うかもしれないですよね。
「こっちが凄くいい店です、ここはコスパいいです」と安くて美味しい店を選んでも、相手からすると「もう歳だからそんなに食べられない、少ない量でいいから静かな店がいい」と思っているかもしれないんですよ。
だからこちらが良いものが相手にとって良いものとは限らないので、まずはそこのすり合わせとか、選択肢を用意するのが重要なんですね。
それがないと独りよがりな提案になってしまうし、それぞれその提案意図をこっちが説明することもできないから、向こうも選びようがないわけです。
提案を「選ぶ側」にはリスクがある
さらに言えば、その提案を選ぶ人が、決裁者ならいいんですけど、そこから更に上司に持って行ったりだとか、社内に持って行ったりするんですよ。
向こうの人が「これでいいと思います」と上に持って行くということは、リスクを伴うんですね。
つまり上司にあげて決裁を取ろうとしたとき、なんでこれにするんだ、これで間違いないのか、これで失敗したらお前の責任だぞ、と彼らは背負わされているわけです。
だから逃げ道、言い訳を用意してあげないといけないんですよ。
今の言い方はネガティブでしたけど、ポジティブに言うと理由です。
これを選んだ理由というロジックがしっかりしていれば、向こうは仮に失敗してもロジックがあるならなんとかなるんですよ。
ところが提案が一個だからと選んでしまうと、何かあったときに「ほらお前の考えが浅いから失敗したんだ」という形になってしまうわけですよ。
そういうことを考えると、向こうの提案する先の人間の立場というのも重要なんですね。
だからその人にとって便利なように、その人が使いやすいように提案することが非常に重要なわけです。
だから一つだけの提案だけでは駄目だし、提案意図を添えてないのも駄目だし、さらにその後、提案を使いやすくすることも大事なんですよ。
提案のやり方は個人で仕事をするときも役に立つ
提案の下手な人に仕事は来ない
これから副業やフリーランスなど、個人で仕事をする人が増えていくと思います。
その際にも提案ができない人というのは仕事が来ない可能性が高いんですね。
例えばクラウドワーク系で、コンペ形式のものがあります。
その際に1個だけで提案してくる人と複数のバージョン違いで提案してくる人がいるんですよ。
その時点でバリエーションが豊かな人に目が行きやすいんですね。
さらにデザインに関してもちゃんと提案意図を添えてくる人と何も添えてこない人がいるんですよ。
何も添えてこない人が考えたデザインなんて、こっちの印象でしか無いじゃないですか。
綺麗とか明るいとか華やかとか、鳥だな虫だなとかで終わっちゃうわけですよ。
ところが例えば提案意図に、「蝶のマークを使っていますが、蝶のマークは西洋の意味では『復活』とか『再生』のイメージがあるので、サプリメントに良いと思います」と添えてあったら、こっちも考えるわけじゃないですか。
提案の本質
人間というのは、本人が納得できるかが非常に重要なんですよね。その納得理由をどれだけ与えられるかが提案なんですよ。
だからその提案というのをして、提案を通すことが重要じゃないんです。
選択肢を用意する、理由を用意するということをして、相手が受け取りやすい形にすることが大前提なんです。
これがない状態で、「僕はこれが良いと思います!どうですか?」と一本槍で持って行っても、まあ相手にされないですね。
こういうのは提案をする仕事の経験のない人には、意外と触れる機会のない考え方だったりするので、ここを疎かにして、例えば同じフリーランスの人でも仕事がちっとも取れない、提案やコンペに勝てない人もできちゃうんですね。
ああいうのを見ていたら、もう可哀想なんですよ。
社会に出ても提案のやり方を学べる機会は少ない
広告代理店の提案手法
実際、私も広告代理店的な提案する会社で働いてましたけど、規模の大きいプロジェクトをやるときは、向こうの担当者に対する提案資料だけじゃなくて、それを要約した管理者向け資料とか、経営者向け資料みたいなバージョン違いの資料まで作ったりするんですよ。
例えばプロモーションにおいても、プロモーションの大目的のような、例えばブランドの認知とか、新商品の認知というのがあったとしても、
実際は、具体的にはこういうティーザーサイトを作ります、こういうテレビCMを打ちます、お店の売り場にこういう小さいディスプレイを置いて、繰り返しリピートしてCMを流しますとかあるんですね。
そうやって個別具体まで書くんですけど、それって管理職とか経営者にはどうでもいいというか、あんまり重要ではないですよね。
なのに一番の現場の人に見せる200枚くらいの企画書を「さあお持ち帰りください。上司に見せて提案を通してください」なんて、おこがましいですよね。
だから管理職向けに量を減らして重要なポイントだけを入れたもの、忙しい経営者向けにたった4枚でまとめたものとか、それこそ1枚にまとめたこともあります。
こういう風に相手の役割とか使いやすさでまとめるんですよ。
内容だけ良くても提案は通らない
そしたら提案先の担当者というのも結局はサラリーマンなので、仕事したくないんですよ。
だったら本人がいいなと思ったものを上司に持って行って、決裁を仰ぐときにちゃんと上司に持っていく資料まで万全に用意されていたら、「もうこれでいいじゃん」と思いますよね。
しかもここまで考えてくれている会社なら大丈夫だろうと。経験もあるし。
だけどそこに「面白いアイデアです!これが素晴らしいです!」と面倒くさい分厚い資料を自分のエゴで押し付けられても、
じゃあこの素晴らしさを要約して、自分なりに噛み砕いて、上司に持っていくのか、無理無理という感じで、いいネタでも消えるんですね。
いいネタで勝負したいなら、自分の会社でやれと、自分一人でやれと。
でも仕事というのはお客さんありきなので、提案するとか自分の案を通したいとか、そういった場合はきちんと候補という形で、根回しをする、武器を整えることが重要です。
提案のスキルは仕事以外でも役に立つ
これ今は仕事の話で言っていますけど、人間関係とか、例えばデートに誘うときも同じで、「何日空いてる?ご飯行かない?」と聞いたら、行くか行かないかの選択肢になるじゃないですか。
「何日時間ある?フレンチと中華どっちがいい?」といったら、行くこと前提で、フレンチと中華の発想に人間の脳って切り替わるわけです。そういう誘い方をした方が誘いやすいですよね。
それと一緒で、捨て案でも全然いいんですよ。本命を一個紛れ込ませた複数提案。これが本当に重要なわけです。
これからの時代、こういったことを学ぶ機会の少ない人は増えると思います。
今これを見ている方の中には「当然だよ、そんなの知ってたよ」という方もいると思うんですけど、今まで一人でやってきた人達は、逆に自分のアイデア一本で勝負してきた人達なので、なかなかそういう捨て案を用意する発想がないと思うんですよ。
でもそれが目的を通すという意味で言うと、意外と重要なので知っておいて欲しいと思います。
提案が一つでいい場合も
ただ立場が変わって、自分が教える場合、コンサルタントのような先生的なポジションになった場合は、いっぱい案を用意していると「コイツ大丈夫か?」ってなってしまいます。
だから逆に求められているのは、これをやったらいいですよという強い一言なんですね。
それが上手くいかない場合は、自分の責任として取ると。「貴方はこうすべきですよ!」みたいな強い言葉が重要なんです。
つまりそれも求められている立場で変わるんですね。
だから「どうでしょう?」という提案をする立ち場では、複数の提案が基本であり前提です。
だけど自分が教え諭す立場になった場合は、一つの一番強いものを自信を持って出すことが重要なわけです。
立場とか役割によって、成功法則とかやるべきことが全部コロコロ変わるんですよ。
自分の立場とか求められていることを意識せず、世の中にある成功理論とかライフハックとか手法にこだわってしまうと、トンチンカンなことになりがちなんですね。
だから今日の話を聞いて、手法としての理解もして欲しいんですけど、自分の今の立場とか自分に求められている内容、もしくはその役割、仕事、そしてどうすべきかというのをよく考えなから、使ってもらえたら完璧かなと思います。
提案を盗む代理店が有りますが
どうすれば良いのでしょうか?
10個提案して1個起用
残りは コッソリ後で使う代理店
どうしたもんでしょう?
YABAIさん
コメントありがとうございます。Gです。
そういうセコいことをする代理店、いますよね~(笑)
そういった会社とはそもそも取引しないのが一番ですが、仕事の関係上、そうも言えない事もありますよね。
私なら、盗まれそうな提案にトラップを仕込んでおきます。
「ある会社の技術を使わないと実現が難しい」とか「自分の人脈だから可能な仕入れ値」とか「既存のシステムを連携させることで実現可能なシステム(ゼロから作るとめっちゃ高い)」など、
相手が自分抜きで企画を形にしようとするときに「あれっ?できない」ってなるようなものです。
向こうも採用してない提案について、後になってから突っ込んだ質問もできませんし、ある程度の予防にはなるかと・・・
とは言え、自分の手を離れたアイデアについては、ある程度諦めてしまうのも精神的には良いです。
「盗んでまで使うぐらい、俺の提案を高く評価してるんだな」と事実に対する受け取り方を変えるのです。
相手に見せた提案を盗まれるという事は、どうしても防ぎようがないところもありますので。